近年、乳癌を取り巻く環境には著しい変化がみられます。それは、乳がん発生数の増加と乳がん診療の変化です。
乳がんが女性の悪性新生物の罹患数のトップになり、年間9万人以上の女性が乳がんに罹患するようになりました。これは女性の約12人に1人が乳がんに罹っていることを示し、乳がんによる死亡数も年間1万人を超えています。乳がん治療についてみれば、マンモトームをはじめとした診断手技や画像診断精度の向上、センチネルリンパ節生検・乳房再建術といった手術内容の進化、さらには新しい術前・術後のホルモン療法・化学療法・分子標的治療の登場など激動の変化を遂げています。
このような背景のなかでわれわれ医療者に求められるのは、常に新しい知識を取り入れ、それを吟味し、実際の医療に還元していく立場であると考えます。
乳腺外科は、単一臓器が対象ではありますが、病気の発見・診断にはじまり、外科的治療・内科的治療さらには形成外科的な技術と、そのカバーすべき分野は大変広いと言えます。
当科は大学病院として多くの乳がん手術症例数を誇り、豊富な臨床経験にもとづいた指導を実践しています。
研究面では多施設共同研究を含む数多くの臨床試験を手がけ、独自のエビデンスを創出しています。また、基礎研究から得られた成果を臨床応用するためのトランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)にも積極的に取り組んでいます。医局スタッフとしてこれらの研究に携わることで将来のキャリア形成に役立つリサーチマインドを育てます。
実際の臨床の場では学問的な知識はもちろん必要ですが、それだけで十分な診療ができるわけではありません。そこには人としての思いやりのある心がなくてはなりません。
このような観点にもとづき、当科では学問・人格の両面で信頼される医師の育成を目指しています。
女性の乳がん罹患率の増加にともない、約12人に1人の女性(1クラスに2人ぐらいの割合ということです)が生涯のうちに乳がんに罹るという現状を考えると、実際の臨床の場面で遭遇する機会は極めて高いといえます。各講義・実習を通して将来役立つ知識が身につくよう学んでいただきます。